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一覧に戻るヨーロッパフットボール回廊『UENL イングランドがハンガリーに2連敗』
22・06・16
ヨーロッパ各国のリーグ戦は全て終了し、この6月より移籍解禁となり、各クラブは来季の補強のための選手獲得交渉へ突入している中、今年はカタールでのワールドカップ(W杯)が行われる。その出場国をかけたプレーオフ戦3つの出場権を懸け、この6月初めに行われた。
勝って出場権を得たのはウエールズ。ウエールズはウクライナと対戦し1−0で勝利、1958年以来の出場を果たした。ウクライナは戦時下の中でのハンデある闘いで健闘したが及ばなかった。
一方、アジア5位のオーストラリアは南米5位のペルーと対戦、0−0の後、PK5−4と勝ちカタール行きを決めた。また、オセアニアの勝者ニュージーランド対中南米の4位のコスタリカとのプレーオフはコスタリカが1−0と勝ち2014年ブラジル、2018年ロシア大会に次ぎ3回連続出場を決めた。
日本でもW杯の前哨戦としてのフレンドリーマッチ、キリンカップ戦がチリ、ガーナ、チェニジアを招待して行われたが、ヨーロッパでは、国別対抗戦、「UEFA Nations League(ヨーロッパ・ネーションズ・リーグ=UENL)」がカタールW杯の前哨戦ともいうべきこの6月初旬行われた。そもそも、このUENLとはいったいどのような大会なのか?
その答えは簡単であるが仕組みは複雑である。
まず開催期間については
1.頂点のFIFA World Cup(W杯):4年に一度偶数年に開催(2022年はご承知カタール開催)
2.次にUEFA European Football Championship(通称UEFAカップ=ユーロともいう):W杯の合間の偶数年開催(次は2024年)
3.そして現在行われている表題のUEFA Nations League(UENL)である。
時期は2019年に始まり各奇数年に開催される(現在の予選は2023年の本大会用であり、次は2025年、2027年と続く)。
ヨーロッパには上記3つの国別対抗戦があり、その為の予選がそれぞれ実施されており、今年のようにW杯の予選、プレーオフとUENLが重なっている年もある。
このUENLを組織化した大会とした理由は、国の代表戦は従来のようにフレンドリーマッチではなく、真剣勝負の試合とすべきとするUEFAの方針からきている。
また一方では、スポンサーが付きやすいトップの国独自の対抗戦を排除し、UEFA加盟国すべてに放映権料、スポンサー権を配布できるようにとの配慮もうかがえる仕組みである。
そして表題のUENLは54加盟国をランク付けし、グループ分けし、グループごとにその年の結果で昇格、降格もあるリーグとしている。
例えばトップ(最上位)リーグは4チーム一組の4グループ(4×4チ−ム)に分け計16チームが組み入れられている。
最上位A組16か国のグループの組み分けは下記の通り。
A1組にはデンマーク、オーストリア、フランス、クロアチア
A2組にはポルトガル、スペイン、チェコ、スイス
A3組にはイタリア、ハンガリー、ドイツ、イングランド
A4組にはオランダ、ベルギー、ポーランド、ウエールズ
この16か国がそれぞれホームアンドアウエーで戦い上記各組の上位4チームがノックアウト方式の決勝ラウンドに進み、優勝戦まで行くのだ。リーグの次の試合時期は2022年9月の予定。そして上位4か国は次のUEFAカップ=ユーロへの自動出場権を得られる事になる仕組みである。
最上位リーグの下はB1、B2、B3、B4組それぞれ4チーム、合計16チームが戦い、各組のトップチームは上記A組の最下位の国と入れ替え(昇格・降格)を行う。更にその下の組、C1、C2、C3、C4組のトップは昇格するが、各組最下位の4チームは、残留プレーオフを行い、2チームが2組編成のD組(7チームを2つに分ける)に降格する。
そのA組の激戦グループはA3組のイタリア、ドイツ、イングランド、そしてハンガリーであろう。
現在4試合を消化しトップはハンガリーが躍り出てきた。6月4日の対イングランド初戦はブタペストで行われたが、先のW杯予選で観客が騒ぎ、少年と同伴者のみを認めるいわば無観客に近い状況で戦いイングランドは0−1の痛い敗退を喫してしまった。
その後もイングランドはドイツと1−1の引き分け、イタリアとも0−0の引き分けと勝つ術を忘れ、シーズン終わったばかりで選手が疲れているという言い訳を払拭すべく6月14日ハンガリーへのリベンジを図った。
しかし結果は、1953年11月25日にウエンブレースタジアムで行われた親善試合で『Magical Magyors(魔法のマジョーレ=ハンガリーの事)』の異名をとったハンガリーのエースストライカー、プスカスに翻弄された悪夢の3−6で敗戦以来の屈辱的な0−4での敗戦。わずか10日で同じチームに2連敗を余儀なくされてしまった。
優勝候補と目されていたイングランドデフェンスの脆弱性を見せつけられた一戦であった。
このホームでの4点差をつけられた大敗は、1928年ホームでスコットランドに5−1で敗戦して以来であり、地元イングランドファンは監督サウスゲートの更迭をも叫び、9月に予定されているドイツ、イタリア戦に勝つことが要求されている。ストライカーでキャプテンのハリー・ケーンしか得点源がないイングランド。これからのオフにどう立て直すのか課題は大きい。
■現時点(6月14日)でのA組の順位は下記(4試合消化勝ち点)の通り
A1組:デンマーク(9)、クロアチア(7)、オーストリア(4)、フランス(2)
A2組:スペイン(8)、ポルトガル(7)、チェコ(4)、スイス(3)
A3組:ハンガリー(7)、ドイツ(6)、イタリア(5)、イングランド(2)
A4組:オランダ(10)、ベルギー(7)、ポーランド(4)、ウエールズ(1)
◆筆者プロフィル◆
伊藤庸夫(いとうつねお)
東京都生まれ
浦和高校、京都大学、三菱重工(日本リーグ)でプレー、1980年より英国在住
1980−89:日本サッカー協会国際委員(英国在住)
89−04:日本サッカー協会欧州代表
94−96:サンフレッチェ広島強化国際部長
2004−06:びわこ成蹊スポーツ大学教授
08:JFL評議委員会議長(SAGAWA SHIGA FC GM)
伊藤 庸夫